長い旅から帰ってくると、庭の甘夏の木のもとに、思わぬものが出現していた。大理石の原石が隆起したかのような、白い三角形の巨大建造物。庭先で遊ぶ鳥たちに尋ねてようやく正体を知った。
まっくろに日焼けした働き者たちが家に忍びこみ、おびただしい数の角砂糖を運んで積み上げ、女王の陵墓を築いたというのだ。ただひたすらに、敬愛する彼らの母の永遠を願い――
白い三角錘のてっぺんに、ついに神秘の夜がおとずれた。庭じゅうの草葉の陰から、おごそかな奉唱が巻きおこり、千年来の命の粒子がひろがるルリ色の彼方へ一筋の淡い光が立ちのぼる。光は夜空と漏斗状につながって、白い砂時計が流れだし、神の息吹を地上へみちびく。
働き者たちは触角のささやきを止め、くろい瞳をまっすぐ据えて葬送のときを見まもった。甘夏の青葉をすかし、星の手がさやさやと墓畔に降り注ぐ。そして彼らの母は、あまく香る永遠のなかにとけこんだ。
残光のさす縁側に腰かけ、もぎたての甘夏を噛みしめる。若い酸っぱさが舌をわたり、まなじりに移っていった。
(おわり)
※本作は、『500文字の心臓』特別企画MSGP2005二回戦に出展したものです(ブログ掲載にあたり若干改稿)。結果、惜敗。
そして、このとき対戦した春名トモコさんがMSGP2005を見事制覇しました! 優勝おめでとうございます。
2005年11月09日
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