CGI

2005年08月25日

「魔法」(2)

 この手に宿る、今もって鮮明なひとつの感触。二十五年を生きてきて、一度だけ、あれは“それ”らしきものだったのかと思える出来事がある。
 大学時代のある日。
 自転車でバイトに向かう途中だった。寝坊したせいで全然時間がなかった。それなのに、起きぬけの飢餓に耐え切れず、マクドナルドに飛び込んだ。注文すると、スマッシュを打ち返すようにすぐ出てきた。
 足早に店を出て、自転車をこぎながら大急ぎでチーズバーガーセットを食べる。ハンドルを拳で押え、ハンバーガーとコーラとポテトを交互に口へ運ぶ。信号に引っ掛かればブレーキをかけて止まる。通行人はベルを鳴らしてすかさず避ける。
 そして、バイト先に着くまでのわずか五分間余りで、僕はポテト一本すら残さず全て食べ切った。いつ思い返しても、本当にどうやって食べたのか自分でも分からない。

(おわり)


『500文字の心臓』タイトル競作「魔法」投稿作品。
posted by sleepdog at 18:37| 北海道 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 旧作倉庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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