この手に宿る、今もって鮮明なひとつの感触。二十五年を生きてきて、一度だけ、あれは“それ”らしきものだったのかと思える出来事がある。
大学時代のある日。
自転車でバイトに向かう途中だった。寝坊したせいで全然時間がなかった。それなのに、起きぬけの飢餓に耐え切れず、マクドナルドに飛び込んだ。注文すると、スマッシュを打ち返すようにすぐ出てきた。
足早に店を出て、自転車をこぎながら大急ぎでチーズバーガーセットを食べる。ハンドルを拳で押え、ハンバーガーとコーラとポテトを交互に口へ運ぶ。信号に引っ掛かればブレーキをかけて止まる。通行人はベルを鳴らしてすかさず避ける。
そして、バイト先に着くまでのわずか五分間余りで、僕はポテト一本すら残さず全て食べ切った。いつ思い返しても、本当にどうやって食べたのか自分でも分からない。
(おわり)
『500文字の心臓』タイトル競作「魔法」投稿作品。
2005年08月25日
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