僕の彼女はひとつだけ魔法を使える。
「タイムカプセルを埋めた場所を探し当てる」魔法。
皆はっきり言いたがらないけれど、人間は誰もがそういうような魔法を必ずひとつ使えるようだ。例えば、僕の弟は「喉に引っ掛かった魚の骨を取る」魔法。僕の友人の田中は「触るだけで食べ物の賞味期限が分かる」魔法。木下は「ペンキの塗り立てを一目で判別する」魔法。
という具合だ。
僕は自分のがどんな魔法かまだ知らない。気になるけれど、分かってしまったら、それはそれで寂しいものだ。いつも通り暮らす中でちょっとした奇蹟が訪れる瞬間を、僕は何気なく待ち続けている。ジャングルジムの高層階に登って。
(おわり)
『500文字の心臓』タイトル競作「魔法」投稿作品。
2005年08月25日
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