夏真っ盛りの、ある日の話。
独房の一室がもぬけの空であることに監守が気付いた。
どうやらいつの間にか脱走したようだ。
鉄格子を破られた形跡はまったくない。そのうえ目撃者もいない。
ただ、奇妙な足音だけを耳にした者が何人かいた。
それが午前8時のこと。その独房に日が差し込み、暑さが増す時刻だった。
その後、午前11時頃に、駅前を巡回中の若い婦警が、
群れをなしてあたふたと疾走する「ところ天」を目撃した。
鉄格子を抜け出したのは寒天だった――という他愛もない話。
(おわり)
2005年08月25日
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