まずはノミネート作品からご紹介します。特にノミネート数は決めていなかったのですが、ちょうど10作になりました。感想はまとめて総評に述べさせていただきます。
月兎父と一献酌み交わせ (あっこさん)
あだ討ちて 血刀捨てし あおぐ月 (瀬川潮さん)
脛毛抜く愚妻懐かし夜半の月 (あっこさん)
秋葉月 十月十日の 夜に萌え (kamiyaさん)
月の下 両目閉じれば 秋の景 (tomocatさん)
君の手を 握る其の時 秋時雨 (高橋京希さん)
気が付くと満月が齧られている (根多加良さん)
月を撃て尾花かすめて牛車飛ぶ (はやかつさん)
ころり寝ころべば乳枕 (団鬼緑さん)
文化祭 終えてふたりに 月灯り (まえぞうさん)
【 総 評 】
俳句は歌に似た一面があり、歌は世につれ人につれ――その時代の人のこころを詠むものです。たった十七文字程度の世界では技巧を凝らしたり、遠回りしたりせず、詠み手の心に浮かぶ情景がそのまま表れるものだなぁ、とあらためて思います。その意味で、「月兎―」は亡きご尊父を悼み、慈しむ心がやさしい語り口で映し出された作品でした。
また、歌には音景色がよく似合います。「月の下―」と「君の手を―」はともに秋らしい虫や雨の音が作品世界をぱっと広げてくれました。「月の下―」は素朴な言葉づかいながら、両目を閉じてささやく秋の楽しみがよく出ていて、また「君の手を―」は月は出ませんが、雨上がりの月を期待させるセンチメンタリズムがあふれていました。
逆に、視覚とリズム感に凝っていたのは「あだ討ちて―」と「月を撃て―」の躍動的な2作です。現代風と古風それぞれのアクション俳句と言いましょうか、月を見るというお題でも、詠み手のデザインワークによって俳句に新しい力が吹き込まれると感じました。
小説では通常、時は経過しますが、俳句では刹那の情景を詠むものが多いように思います。しかし、時の経過を伝え、わずかな字数の中に移りゆく心の流れを織り込む楽しみもあります。「脛毛抜く―」は昔と変わらぬ月の姿と、妻と離れた自分と対比する哀しみを覚えます。また、「気が付くと―」は対象を独特に歪めた作品ですが、もしかしたらずっと見ていても気づかなかったくらい少しずつ齧られていたのかと詠むと、思わぬ奥深さを秘めています。
にやりとするユーモアでは「秋葉月―」に優る作品はなかなか見つかりません。遊び心もまた文化であり、秋葉や萌えをうまく扱った小粋な一品でした。「ころり―」はサービスで選んだわけでなく、お月見のテーマに少し離れていますが、縁側のほのぼのした
さて、グランプリ以外の作品評をまとめていましたら、たまたまこうなってしまいましたが、私が今回『マイクロスコピック☆お月見賞』に選んだのは、まえぞうさんのこちらの俳句です! おめでとうございます!
文化祭 終えてふたりに 月灯り (まえぞうさん)
とても自然な言葉で、表情豊かで味わいに満ちた作品でした。発句の「文化祭」で騒がしさがバッと頭に浮かび、「終えてふたり」として誘われる少し特別な世界に、やさしく静かな「月灯り」が照らされる。青春期の淡い恋心が胸いっぱいに広がる美しい作品でした。
作中のふたり同様、詠み手もまた多く語らず、しかし印象深い余韻が残る、そんな自然体の姿勢に強く惹かれるものがありました。月灯りの引き立て方も、誰彼にも伝わると思えるほど素敵です。
というわけで、受賞されたまえぞうさんにどうぞ惜しみない喝采をお願いします!!
純粋にお月見と俳句を楽しんでいただくため、企画側から特にお贈りするものはございませんが、心を込めた選評に代えさせていただければ幸いです。受賞作、ノミネート作、あるいは主催者へのメッセージなどがありましたら、ぜひこの記事の【コメント欄】にどんどん書き込んでくださいね!
どうもありがとうございました。


